-
〈大挙して大学に進学した彼らが、マスプロ教育の実情に幻滅し、アイデンティティ・クライシスや生のリアリティの欠落に悩み、自傷行為や摂食障害といった先進国型の「現代的不幸」——それは飢えや戦争といった発展途上国型の「近代的不幸」とはまったく異質なものだった——に直面し始めていた〉(上p.99)
〈この時代の若者をおおっていた「閉塞感」「空虚感」「リアリティの欠如」は、それ以前の政治運動や労働運動、平和運動を支えていた、飢餓や貧困からの脱出、戦争の恐怖といったものとは、およそ異質なものだった。それは貧困や戦争といった「近代的不幸」しか知らない当時の大人たちには理解不能な、ぜいたくな悩みとしかみえない、高度成長で大衆消費社会に突入しつつあった日本社会で出現した、新種の「現代的不幸」だった。そしてこの新種の「生きづらさ」が、「あの時代」の叛乱の背景になってゆくのである〉(上p.147)
〈全共闘運動は、高度成長にたいする集団摩擦現象でもあったが、日本史上初めて「現代的不幸」に集団的に直面した世代がくりひろげた大規模な〈自分探し〉運動であった、ともいえるだろう〉(下p.794)